バランス栄養、完全栄養、ベースフード、ビタミン、ミネラル

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年5月28日掲載

江本三男 日本食品技術株式会社 代表取締役 技術士 農業部門(食品製造)

はじめに

 日常の食事で偏りのない食品を食べていれば、栄養のバランスがくずれることはないのであるが、人には好き嫌いがあるもので、偏食で健康に悪影響がでることにもなる。日頃から、ある程度はバランスを意識しながら食生活をおくったほうがよいのは自明である。実際に自分の食生活が完全で理想的であると誇れる消費者は、少ないのではなかろうか。

1.栄養成分のバランスをとるということ  

 最近の市場で、栄養のバランスを意識した商品を発売して脚光をあびている企業がある。同社は本年度にアメリカでも商品の販売を開始した。アメリカでは、子供の栄養過多に対して学校給食を見直す動きがミシェル・オバマによって呼びかけられたこともあり、食べ物の栄養バランスに関心がよせられている。

 ここで、栄養のバランスをコントロールする二つの方法について述べる。一つは、普段の食事で不足している栄養成分の微量成分をサプリメント等で補給するか、特定の栄養成分として、例えば蛋白質の多い食事をすることである。また、過剰に特定の栄養成分を摂取している場合は、その栄養成分が少ない食品を摂取することでバランスをとることである。二つめは、商品の状態で完全にバランスのとれたものを、日常的に食べることで、不足している栄養成分を補給することである。

2.商品としてのバランス栄養食品 

 特に、日ごろの食事でどのような栄養成分が不足しているか不明の消費者にとって、漠然たる不安がよぎるのではないだろうか。バランス栄養食品を食べることは、不足しているかもしれない成分を補給する「免罪符」的な位置づけになりそうである。

 商品としてのバランス栄養食品には、五大栄養成分に加えて、主要なミネラルやビタミンとともに、微量ミネラルの含有量が分析値で表示されている。その栄養成分の数は約30種類にもなり、これを棒グラフにしてパッケージに表示すると、消費者は「これだけ多くの成分を配合しているのか」「ここまで栄養に配慮した商品なのか」と商品価値を感じることになる。

 この傾向は、サプリメントでも同様で特定単品のビタミンやミネラルを配合した商品を購入する消費者と、バランスを求めてマルチビタミンミネラルを購入する消費者が存在することでも明らかである。ここで、消費者は、自己の栄養状況を意識してそれぞれに相応しい商品選択を行っているようである。もちろん、メディア等にる特定の情報に影響されて購入にいたる場合も多い。

 さらに、バランス栄養食品は、日常的に長期間摂取することが好ましいので、安定した商品販売が確保されることが多く、食品メーカーの求めるロングセラー商品になりやすいのである。

 また、商品のコンセプト設計として、日常的に食べる食品であれば大量に継続的に消費される食品として、主食に近いものが一般的である。日本人の主食は、ご飯といわれてきたが、パン食も消費比率が高い、また麺も消費される頻度が高い。これらの食品群に設計段階から、不足している栄養成分を配合することで、商品価値を高めてバランス栄養食品とすることができる。

 栄養バランスを構成する方法として、不足する成分を配合する場合と、過剰に含まれる成分の少ない食品を組み合わせることを示した。
さらに、商品設計の最初から入手が容易な各種の食材や加工原料の成分を分析して、これを組み合わせることで最適のバランスを構成する場合がある。これを、ファブリケートフード(構成食品)という。考え方は、通常の食事で数多くの食材を食べることで、全体のバランスをよくすることと同様であるが、これを企業が、商品として発売することである。

まとめ

 最近、市場で脚光をあびるようになった、「完全栄養食品」が「バランス栄養食品」としてのコンセプトを共有することで、食事の栄養バランスに関心のある消費者の食事環境を改善することに寄与することが可能となり、商品購買の動機になるとされる。ところで、これらの商品の初期の歴史からいえば、医療食として手術前後の栄養補給をスムーズに行うために多くの栄養成分をバランス良く含みしかも吸収をよくした食品又は医薬品がベースになっている。これらの商品開発を担当した著者として、市場の動向を興味深く注目している。

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