アイデア発想法 ― ブレインライティング

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年6月11日掲載

跡部昌彦  跡部技術士事務所(食品開発コンサルタント)
技術士(農業・総合技術監理部門) 

 食品メーカーで、長く商品開発に従事し、いろいろな開発アイデアを提案してきた。数多くのアイデアを提案するのは苦痛であり、先人が考えた方法に従って系統的に提案したいと思うようになり、アイデア発想法を学んできた。

 アイデア発想法で、最も使われているのは「ブレインストーミング」だと思われるが、他にも「オズボーンのチェックリスト」、「シックス・ハット法」、「マンダラート」、「SCAMPER法」、「TRIZ法」、「PREP法」、「マインド・マップ」、「等価交換法」など、数多くの発想法がある。これらの発想法の中で、私が興味をもち、自分が欲しい開発アイデアの中で使用するだけでなく、開発担当者への教育に使ってきたのが「ブレインライティング」であり、ここで紹介してみたい。

 「ブレインライティング」は、「ブレインストーミング」のように、テーマに関して、アイデアを無秩序に出して発想する方法であるが、シートに書き込むことによって発想する方法である。「ブレインストーミング」と同様、まずはテーマを決める。6人で「ブレインライティング」を行う場合、6人それぞれに「縦3×横6マス」のシートを配る。最初に、6人それぞれがテーマについて5分間考え、3つのアイデアを縦列に書き込む。5分経ったら、進行役の合図で、その書いたシートを隣の人に回し、それまでに書かれているアイデアを読んで活かしつつ、テーマについて発想し、3つのアイデアを次の縦列に記入する。これを1周するまで(5回)続け、最後(6人目)の人が、未記入の縦列にアイデアを書くと、18個(3個×6人分)のアイデアが記入されたシートになる。このシートは、6人それぞれが持っているので、108個(18個×6シート)のアイデアが集まったことになる。(ここまで30分(5分×6回)かかる)

 続いて、その108個のアイデアからの絞り込みである。6人それぞれに1枚ずつシートを返却し、そのシートに書かれている18個のアイデアのうち、いいと思うものにマーク(★印など)をつけてもらう(幾つでも可)。そのシートを隣の人に渡し、自分のところに回ってきたシートにも、18個のアイデアからマークをつけてもらう(幾つでも可、前の人と重複しても可)。これを1周させ、6枚のシートを回収すると、108個(18個×6シート)のアイデアから、マークの多いものが「みんなが認めた優れたアイデア」として抽出されるのである。

 「ブレインストーミング」では、発言が多い方や少ない方がみえ、多い方のアイデアに左右されるとか、いい発想をもっていても、恥ずかしさなどから発言がなければ表に出てこないという課題がある。これを書かせることによって、どんな方でも強制的に平等にアイデアを出させようとするのが「ブレインライティング」である。ポイントは、前の方が書いたアイデアを読み、それを活かしたアイデアとして書くということであり、それによって、自分1人だけでは考えつかなかったようなアイデアも出るようになるのである。ただ、5分という時間内に、前の方のアイデアを読み、そこから発想したアイデアを記入するというのは、精神を集中させないとできないものである。「ブレインストーミング」では考えているふりをして、休憩することもできるが、「ブレインライティング」では、それができない。精神的に疲れる作業であるが、だからこそ平常心では出なさそうな突飛なアイデアが出る可能性がある。

 「ブレインストーミング」がマンネリ化されはじめたと思っている方、それに限界を感じ始めた方、「ブレインライティング」を使っていただければと思う。若い開発者への発想法の教育にも使ってもいただきたい。次々にアイデアを発想していくという面白さを味わいながら、発想の仕方の訓練になるものと思う。

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 専門は食品の研究開発で、商品開発、食品加工技術、食品素材開発、食品機能研究、おいしさ評価、設計品質管理、研究開発マネジメントなど。

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