食と健康 ―アロニアの機能性―

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年2月6日掲載

技術士(農業部門) 水道 裕久

 アロニア属(Aronia)は別名「チョークベリー(Chokeberry)」とも呼ばれる北米原産のバラ科の小果樹であり、ロシアやブルガリア等で広く栽培されている。日本では北海道の一部で栽培されている。アロニア・ アルブティフォリア(A. arbutifolia)とアロニア・メラノカルパ(A. melanocarpa)の2種が存在し、前者は実が赤く観賞用として、後者は実が黒く食用として使われている。特に後者については、ポリフェノールが豊富に含まれ、様々な生理機能が報告されていることから、近年、健康果実として密かに注目を集めている。ここでは、アロニア(A. melanocarpa)に含まれる特徴的な成分とその主要な機能性について紹介する。

1.アロニアに含まれる主な成分

アロニアには、食物繊維、リンゴ酸、ポリフェノールやカロテノイドが多く含まれている。特に総ポリフェノール量はブルーベリーやクランベリーの3倍以上、ポリフェノールの一種アントシアニンはそれらの5倍以上も含まれており、他の野菜や果実と比較しても最高レベルにある。アロニアには他のポリフェノールとしてクロロゲン酸、エピカテキン、ケルセチンなども豊富に含まれている。

2.アロニアの機能性

①抗酸化作用

アロニアに多く含まれているポリフェノールやカロテノイドには活性酸素を消去する作用がある。その抗酸化力は、ORAC値(活性酸素吸収能力)等の測定で、野菜や果物の中で最強グループに順位づけされている。アロニアはその優れた抗酸化作用により、活性酸素が関与する腎・肝障害等の種々の疾患に対して保護効果がある可能性がある。

②血糖値上昇抑制作用

 アロニアジュースには糖尿病のヒトやモデルラットにおいて血糖値の改善効果があることが報告されている。そのメカニズムとして、アロニアにはジペプチジルペプチダーゼⅣ(DPP-Ⅳ)阻害活性やα-グルコシダーゼ阻害活性があることが示され、前者の主たる活性成分がシアニジン3,5-ジグルコシドであることが報告されている。DPP-Ⅳは血糖値を下げる働きがあるインスリンの分泌を促すホルモンであるインクレチン(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

(GIP)やグルカゴン様ペプチド‐1(GLP-1)等)を切断し、不活化する作用を有しており、これを阻害することによってインスリン分泌の低下が抑制され、血糖値上昇が抑えられる。一方、α-グルコシダーゼはデンプンや二糖類を単糖類に分解する酵素であり、これを阻害することによって血糖値上昇が抑えられる。DPP-Ⅳ阻害剤やα-グルコシダーゼ阻害剤は糖尿病患者の血糖値改善用の医薬品になっているものがあり、同様な活性を有するアロニアを摂取することにより血糖値の改善作用が期待できる。

③抗肥満作用

 肥満性糖尿病モデルマウスにアロニア果汁を摂取させることにより、体重の増加が抑制され、皮下脂肪や内臓脂肪の蓄積も抑制されることが確認されている。これらの結果から、アロニアには肥満の予防や体脂肪の蓄積抑制効果が期待できる。

④血圧降下作用

 高血圧モデルラットにおいて、アロニアの摂取により血圧の降下が確認され、その作用は腎臓においてアンジオテンシン変換酵素が阻害されることによることが報告されている。

⑤血中脂質改善作用

 高脂肪食を食べたマウスでは食べていないマウスに比べ、血中の中性脂肪やLDL-コレステロールが増加するが、高脂肪食と一緒にアロニアを摂取させることにより、高脂肪食摂取による血中の中性脂肪やLDL-コレステロールの上昇が抑制されることが示されている。 

⑥抗菌作用

アロニアには、in vitro試験において黄色ブドウ球菌、大腸菌、セレウス菌、緑膿菌に対する抗菌効果があることが報告されている。また、黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を示す成分として、クロロゲン酸、プロトカテク酸やゲンチシン酸等が同定されている。さらに、アロニアジュースの長期飲用により尿路感染症の発症が低下したことも報告されている。

 このようにアロニアには種々の機能性を示す成分が含まれており、食品として日常的に摂取することにより、上述の生活習慣病や感染症の予防・軽減等、我々の健康維持に有用であると思われる。

専門分野は、食品の機能性、口腔衛生および労働安全衛生(化学・保健衛生)。

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