和食と食育

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年3月5日掲載

石田賢吾  (技術士農業部門)

 和食は日本の風土と共に作り上げられた健康的な食である。近年生活習慣病の増加など問題点も顕在化しているが、優れた食としての特徴を生かすためにも食育によって、おいしさと健康に優れた食として定着させることが重要である。

和食の成立ち

 日本列島に人類が住み着いたのは7~8万年前といわれ、狩猟・採取の生活から、日本で稲作が始められたのはBC1500年頃と言われている。稲作の普及につれて米、麦、雑穀を主食として、野菜、イモ、魚介、海藻を副食とする主・副食の分離が始まったのは平安時代とされている。

 和食文化は、資源の持続的な利用による「自然の尊重」が基本であり、これに海外からの食文化が融合して作り上げられた。即ち、自然の豊かな食材を活かす調理法や和食独特の加工・貯蔵法が出来上がっている。そして、自然の神をもてなし、共に食べて健康と豊作を祝う米を中止にした食文化である。

 一汁三菜とは、主食のご飯と汁物(みそ汁)、三菜は主菜(肉魚、大豆、乳製品など一品)、副菜(焼き物、煮物、和え物など二品)と香の物(漬物で数に加えない)の事である。

日本型食生活の確立 

 日本の気候風土に適した米を中心に、魚や肉、野菜、海藻、豆などの多様な副食を組合わせて食べる食生活を日本型食生活という。このような食生活は、日本の地理的環境や永年の歴史を積み重ねて確立されたものである。 
 日本型食生活の用語は昭和56年の農政審議会において当時の食品総合研究所企画連絡室長の田村真八郎氏が名づけられたと言われている。

 当時は、食糧自給率も50~60%(供給熱量ベース)で、肉、魚や乳製品、果物も増えつつあった。

和食は健康食

 日本型食生活のたん白質(P)、脂質(F),炭水化物(C)のPFCバランス(現在はエネルギー産生栄養バランスという)が1980年頃で、P13:F25,5:C61.5と健康に良い理想的なバランスであった。

 京都大学名誉教授の家森先生はこの食事のメリットを次のように述べられている。米が主食で摂取エネルギーの50%以上を炭水化物からとっていること、魚を多く食べて含硫アミノ酸タウリンを摂り、血圧や動脈硬化を防いでくれる。またEPA,DHAも摂取できるため、中性脂質を下げ、生活習慣病の予防になる。また、豆腐、納豆、豆乳のなど大豆製品が良質のたんぱく質、植物性脂肪、食物繊維を豊富に含んでいること、イソフラボンには血圧やコレステロールを下げるだけでなく、肥満や骨粗鬆症を防ぐ効果がることを指摘され、日本食を称賛されている。日本人は、米や大豆を良く食べ、恵まれた海の幸である魚や海藻をバランスよく摂る食習慣によって世界的に見て長寿国になったと言われている。日本人の健康寿命は2018年シンガポールに次いで第2位で74.8歳、平均寿命は第3位で83.9歳と報告されている。

塩を好む食生活

 和食はだし文化であり、その味の中心はうま味である。このうま味には、塩味が良くマッチし、うま味とコクを増強する。

 一方、日本で発達した独特の調味料である味噌、醤油や魚醤油の製造にも食塩による発酵調整が重要な製造技術であり、食塩の摂取に拍車をかけた。

 これに加えて、四季があり、長い列島の日本では、魚や野菜類の塩蔵技術が発達した。冬の永い地方ではこの塩蔵品を多食するため食塩摂取量が増える傾向があった。

 近年、食品加工技術、食品保蔵技術、調味技術の発達と医学の疫学的、臨床研究の発達により、減塩運動が進展し、減塩調味技術が開発されて成果が出つつある。

最近の食生活の問題点

 近年、日本ではライフスタイルの変化等とも関連しながら、食生活の乱れや運動不足による生活習慣病が増加している。我が国の死亡原因の約6割が糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病やがんであり、また、寝たきりの原因は脳血管疾患が30%以上と言われている。

 これらの病気の発症には食生活の乱れも一つの原因とされている。
エネルギー産生栄養素バランスで脂肪(F)の比率が欧米並みの29%になり、BMIも25を超える人が多く、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)やその予備軍が増加傾向にある。

和食と食育による健康の増進

 エネルギー産生栄養素バランスを1980年頃の、P13:F25:C62程度に戻すこと。これに食物繊維や野菜、カリウムの摂取量を増やし、減塩に留意する事、脂質についてはn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取などが重要である。

 同時に、食事と運動との関係においても、適正体重を維持するためにも食育として理解を深めなければならい。近年の加工食品、外食、中食などまた、特定保健用食品、機能性表示食品など多様な食品の存在する中で、食品表示法も改訂された。

 特に学校教育において、食育を重点的に推進し、食育によって食べ物と健康との関係をよく理解することが日本の国益にかなったものといえよう。

 

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