海洋プラスチックごみ問題を考える

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年月日掲載

木本 晋作  木本技術士事務所 所長 技術士(機械部門)

 海洋プラスチック問題の現状は、プラスチック製品にしめる容器包装の割合が36%、有効利用されないプラスチックごみが79%という国連環境計画のデータが示されている。

 プラスチックは、私たち身の回りのさまざまな製品に使用されている。例えは、バリア性の高いプラスチックを製造し食品包装に使用することで、食品の消費期限の長期化、食品ロスの低減にもつながると言える。

 その一方で、使用済みのプラスチック製品が既存の社会システムと合致せず、適切に回収・廃棄されないことから、環境に放出されている。そして近年では、海洋に流出したプラスチックによる環境への影響が懸念されている。

 日本におけるこれまでの取り組みについて見てみることにする。資源が乏しく、国土の面積の小さい日本では、海洋プラスチックごみが世界的に問題視される以前から、資源を有効に利用し環境負荷を低減するシステムを定着させてきている。

 例えば、PETボトル業界は、自主的に軽量化を推進し、2004年度から2017年度にかけて24%の軽量化を達成している。

 また、洗剤等のプラスチックボトルも詰替え用製品の普及により、1995年度から2017年度にかけて製品出荷量あたりの容器包装プラスチックの使用量を42%削減させた報告がされている。

日本の具体的な取り組みを次に紹介する。

⒈ プラスチック使用量削減

 日本の産業界ではプラスチック使用量を削減するための取り組みとして「薄肉化・軽量化」や「詰替え製品の普及」などが進められている。例えば、成形技術や充填技術の向上によるPETボトルの軽量化や洗剤等の詰替え用容器の普及が進んでいる。

⒉ リサイクルしやすい製品・技術・システムの開発

 高機能を実現するための複数の素材を混合・積層することがよくある。複数の素材が混合イン積層していると、取り扱いの問題からリサイクル性が低下することもある。
 これに対して、1つの素材だけで必要な機能を発揮させるモノマテリアル化によって、製品リサイクル性を向上させる取り組みも進められている。

⒊ 生分解性プラスチックの開発・普及

 通常のプラスチックは、自然環境ではほとんど分解されない。万が一、プラスチックが環境中に放出されても、自然環境で分解される生分解性プラスチックが開発されており、海洋プラスチックごみ問題により注目を集めている。

⒋ 紙・セルロース素材の活用

 紙やセロファンなど、バイオマス由来かつ自然環境での分解性が高い素材によって、プラスチックを代替していく取り組みも重要となっている。

⒌ 廃プラスチックの分別、回収、有効利用

 容器包装リサイクル法により使用済みプラスチックの回収・処理・再生化が行われている。今後は、再生樹脂の供給・品質の安定化、高付加価値化等が進められることが重要になる。

⒍ 海洋流出したプラスチックごみの回収

 既に海洋流出したプラスチックを回収・処理することも重要である。回収のためには高い壁となる費用の問題もあるが、回収した廃プラスチックを再利用・高付加価値化することなどができれば、新たな事業活動として期待ができる。

 最後に海洋プラスチックごみ問題の解決にあたっては、「使用済みのプラスチック製品の適切な回収・処理」を徹底した上で、「環境負荷の低いプラスチック製品の開発・製造・利用」を推進していくことが重要であり食品包装業界だけでなく世界全体の問題として今後の取り組みに期待したい。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております