勘を磨いてOODAループを回そう

田村 巧        技術士(生物工学部門・総合技術監理部門)
[合同酒精㈱酵素医薬品工場]

 昨年、これまで県内ではあまり見かけた記憶がなかったセブン‐イレブンが近所にできた。これから便利になると思っていると、半年も経たないうちにいくつもの系列店舗が生活圏内に次々とオープンした。想像をはるかに越えた動きの早さが消費者に強い印象を残し、競合他店の対応を後手に回すことができる。ビジネスも競争である。

1. OODAループを回そう

OODA(ウーダ)をご存じだろうか。これは元々、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した軍事理論である。近年、スピードが重視されるビジネスシーンにおいて、競争相手に勝つために、OODAが注目されるようになった。

OODAは、Observe(現状把握)、Orient(仮説構築)、Decide(意思決定)、Act(行動)に分けられる。現場で起こっていることをよく観察し(O)、なぜそのようになっているのか原因を考え(O)、どのように行動すれば改善に向かうかを検討して(D)、実際に行動する(A)。これが一連のステップであり、行動したあとに、さらに次の手を打つ。つまりOODAをループにして、これを高速で回し、市場をリードしていく。戦場では、しばしば兵数に劣る軍が、素早い行動によって敵を翻弄し、勝利する例が少なくない。これは、競争社会においては、規模よりも早さが大切であることを物語っている。

2. OODAループの例

例えば、新製品の売り上げは全体的に好調だが、ある店舗だけが伸び悩んでいる現状が観察されたとする。そこで考えられる原因として、宣伝ポスターの貼り出しや、陳列の位置が正しくない可能性を推測する。そこで、実際に店舗に行って確認することを選択する。確認の結果、原因は商品を照らす照明にあった。これでOODAが1ループ回ったことになる。さらに照明を正しく設置できなかった原因を考究する2ループ目を回す……。こうして次々に行動するのが、OODAである。

ループを高速で回すうえで、行動の結果を待たずに次の手を打つことも必要になる。そこで重要なのは、経験に基づく「勘」である。これまで勘は、業務の「見える化」を推進する場合に、むしろ悪者にされてきた「KKD」(勘、経験、度胸)の一つであるが、OODAではこれらが重要である。

3. PDCAとの違い

日本発の「カイゼン」といえば、PDCAである。PDCAは、言わずと知れたPlan(計画)、Do(行動)、Check(評価)、Act(改善)であるが、OODAは、PDCAに変わるものではない。PDCAにはないOODAの特徴をいくつか挙げる。

1)計画ではなく、観察に始まる

PDCAでは、初めに立てた計画に沿うように行動する。したがって、ある程度長いスパンで活動し、結果を評価するため、計画が、活動の区切りの時点では的外れになってしまうことも多い。一方OODAは、現場で起きている事象をよく観察し、すぐに対策を検討する。

2) 個人単位の意思決定

PDCAではあらゆる情報をインプットとして計画し、組織の上司との綿密な合意のもとに進められることが多い。一方OODAは、スピードが重視され、その場で判断することが推奨される。チームによる入念な調査よりも、磨かれた個人の勘が活かされるのだ。

3) Agility(俊敏性、適応性)を養う

正しい行動のためには、勘を磨くことのほかに、柔軟な適応力も大切である。適応を繰り返すうちに、やがて自ら市場をリードする状況につながる。OODAを実践するうえで、俊敏に適応するという意味を持つ「Agility」は重要なキーワードである。

4. OODAの効果が発揮できるチーム

チームの行動力をOODAでアップさせることもできる。そのためには、個人の裁量を活かせる組織になることが必要である。個人が自らの感性でOODAを回すためにリーダーは、チームメンバーの方向性を揃えることに注力し、細かい管理(ミニマムマネジメント)から脱却することが求められる。細かい管理は、部下を委縮させ、行動力を削ぐ結果を招く。権限移譲を受けたメンバーは、リーダーへの報告を頻繁に実施すること。こうして、チームの信頼関係を構築することが、OODAループを高速で回し、競争に勝つ組織になるうえで大切である。

5. さいごに

「日進月歩」といえば、技術革新。今の最先端が瞬く間に過去のことになる。PDCAだけでは対応しきれないと感じたら、OODAを意識するのも効果があるだろう。

参考文献
・入江仁之「『すぐ決まる組織』のつくり方――OODAマネジメント」 フォレスト出版


・チェット・リチャーズ、 原田勉「OODA LOOP(ウーダループ)」 東洋経済新報社