お米の感慨

江川和徳     江川技術士事務所

 秋霜の候、蒲原平野(新潟県)は稲がすっかり収穫され、仕事を終えた田んぼが静かに体を休めている。この米は一体どのように炊かれ各家庭で楽しまれているのかとふと思うことがある。

 新米の時期には、馥郁とただよう湯気の香、至福と思う。何で米の需要が減少するのか不思議でならない。本県農業出荷額は米穀市場の縮小に伴い1年に約50億円ずつ減少し米の需要の拡大を願わずにはいられない。包装米飯などの簡便食の普及も重要であるが食卓で炊くご飯の香り、これを米離れした方々に再認識していただきたい。新潟県食品研究センター在職中に米の品質評価に携わった小生の忘れかけた経験を紹介し、薫り高いお米の収穫・調整のヒントになれればと感慨する。

1美味しい米の収穫期の決め方に一言

 収穫時期になると天候を見ながらあわただしく収穫が始まりコンバインと呼ばれる収穫機で稲体と籾が分離される、所謂、生脱穀と呼ばれる技術で収穫後乾燥される。まず、生脱穀では米が稔りあがっているか、登熟中であるかが重要と考えている。すなわち、1年の労苦が報われるか損なわれるかが決まるポイントということである。

 稲の刈り取りは一般に穂の黄色度で判断されて収穫される。収穫された米の登熟歩合は玄米の粒厚で評価され1.7 mmより大きい粒がどれだけあるかで登熟歩合が判断される。しかし、登熟歩合と熟度は微妙に異なり登熟歩合は粒張り具合で植物としての熟度ではない。完熟か登熟中かは、質的に変化しない完熟と稔りに向かい変化している登熟中と考えている。

 即ち、完熟は生脱穀の影響を受けないが登熟中は受けると思う。これの見極め法は玄米の色素で、出穂と同時に一定量のメラニン色素が地の色として形成、収穫適期前はこれを上回る葉緑素があり青米である。刈り取り適期になると地の色のメラニンの色が葉緑素を上回り飴色になる。この玄米の糠中のメラニンと葉緑素を測定し両者の比をとれば完熟米は比の値が小さくなり、登熟中は飴色に見えても値が大きくなる。食味の良かったコシヒカリはこの比の値が小さく熟度が高いと判断されたことを覚えている。昔は抽出法であったが、今は赤外など非破壊で判別できるのではと感慨する。

2誰も振り向かない美味しい米の特徴

 昔から美味しい米の成分的特徴としてアミロース含量や蛋白質含量が低いことが知られており良食味米の育種もアミロース含量の低い方向へと進められた。そのほかに昔から吸水性の良い米は美味しいことが知られているが、隣含量も食味と関係深いように思う。一般に隣含量の高い米が食味が良かったと経験している。隣含量は品種と栽培の両方が関係する因子と思う。その他に、良食味米は澱粉粒が確実に大きく小生の経験ではコシヒカリは10ミクロン近辺の澱粉粒子も存在した。これは今のレーザー型の粒度分布測定器では分からないのでは?昔のようにヘマトメーターと顕微鏡で確認するよりないと感じているがこの点についても関心を示す人はいないのでは?と思う。

3仕上げは精米

 米の精米法は連座型の多段精白が良い。原型精白と云って米の原型通りに小さくなってゆく精米が理想である。胚芽の着いている基部が柔らかく、硬い頂端部に向かって摺りが進む偏摺れ(かたずれ)や腹から背に向けて摺りが進み厚み方向の摺れが進まないなど偏摺れがあり、偏摺れの生じない精米が重要である。小生の経験では水可溶性の蛋白質含量(A)が精白に伴い減少し精白度評価に使用できると思っている。また、白度の影響が出にくいアルコール可溶のたんぱく質(P)との比A/Pで偏摺れの有無が判別でき比の小さな精米の食味が良かったことを記憶している。炊飯の香りが馥郁と漂い艶々のご飯は需要拡大につながると夢見ている。