「中国が嫌い?」

 業務用食品メーカーはユーザーの要望に応えて開発するのが常である。ただ、開発目的に疑問を持つものも少なくない。

 乳化剤フリー、無添加、遺伝子組換え不使用なども開発目的は怪しいが、その中に「チャイナフリー(中国産不使用)」というのがある。

 もちろん中国の生産品が危険ということはない。

 新型コロナ禍前のデータになるが、厚生労働省の令和1年度輸入食品監視統計によると、輸入食品の違反件数は中国(185件)、米国(136件)、ベトナム(56件)、インド(45件)、タイ(37件)の順である。しかし検査件数に対する違反件数の割合を見てみると中国0.23%、米国0.76%、ベトナム0.29%、インド1.3%、タイ0.32%となり、この中で一番少ない。輸入件数が多いから違反が多いように見えるが、割合で考えると他の国の方が多いのである。

 中国自身の取り組みもあるが、日系企業、外資系企業が入り込んで工場管理をしっかりと行っている。実際に監査を行った人からは、日本よりも優れた管理をしていると言う話も聞ける。

 それでもチャイナフリーを要請してくるユーザーに理由を聞けば、「消費者が求めているから」ということになる。

 事実ではある。中国食品の危険をことさらに煽る報道があり、本や週刊誌も面白おかしく書くものだから、消費者には「中国の物は全て危険」というイメージが植え付けられている。ただ、そこに商売チャンスを見いだして、不必要に煽っている食品会社にも責任はある。中には会社の方針としてチャイナフリーを謳うところすらある。

 さて、要望となれば技術開発するのが業務用食品メーカーである。こちらは「どこまでチャイナフリーにこだわりますか?」と質問することになる。

 すなわち、こだわっているのは原材料の産地か、工場の場所か。2次原料、3次原料に関しても原料原産地や工場所在地を気にするのか。キャリーオーバーや加工助剤についても中国を排除するのか。

 例えば、ある植物油の原料がマレーシア産、製造しているのが日本だとしても、酸化防止のために微量添加するビタミンEが中国産ということもある。原料に含まれる不純物を取り除くために使う活性炭の原料が中国製ということもある。香料の一部に中国でつくられた基材が微量含まれていることもある。

 しかし、確認してもユーザーの方針が定まっていないことは多い。担当者によって話が違うケースもある。食品安全と異なり、チャイナフリーにはそもそも明確な意味や目的がないからである。

 本来は、会社、工場、生産者が「衛生的で安全かつ品質の良いものを造っているか」が重要である。どこの国だから良い、悪いとはならない。センセーショナルな報道をされる不良中国企業があるように、日本にだって不良食品企業が存在している可能性はあるのだ。

 食品安全については国際的な認証としてFSSC22000やJFS、Gloval GAP、JGAP等がある。認証を持っているから問題のない企業、生産者だ、と言うことにはならないが、「日本の作物だから安心」「中国の企業だから危険」程度の認識でいるよりは遙かによい。少なくとも認証を取得している企業や生産者なら、外部から指摘されても説明できるだけの根拠を持っているだろう。

 日本の行政もこのことは分かっていて、2018年6月に食品衛生法が改正され公布された。この改正でHACCPが義務化(2020年6月施行、2021年6月猶予期間終了)され、やっと日本でも国際基準に沿った食品安全の仕組みが制度化されたことになる。逆に言えば、今までは「日本のものは良い」という根拠のない安心感ばかりで、中身は国際的な水準に達していなかったとも言える。

 ユーザーの要望に応えて開発を進めながら、この開発を進めること自体がチャイナフリーという根拠のない傾向を煽ることになるのかと思い、鬱々とした気分になる。

(食品化学新聞2021.9.02号 掲載)