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コロナ禍の食糧危機問題

佐藤 正忠 技術士(農業・経営工学部門)

 新型これらウイルスの蔓延とパンデミック

現在の日本はまさにコロナ危機の真っただ中にある。一時的に蔓延が減少したということで緊急事態は解除されたものの、まだ関東地区は蔓延防止対策実施中で、新規コロナ感染者は東京五輪開幕1か月前になっても減少する傾向はみられない。むしろ第5次感染ピークになろうとさえ思われる状況である。6月末現在世界中では感染者数約1億8千万人弱、日本は約80万人。死者数は世界で390万人、日本は1万5千人弱となっていっる。さらに感染者数も死者数もアメリカ、インドがダントツで次いでブラジルである。またブラジルは死者数がアメリカに次いで多いのが特徴である。さらにコロンビア、メキシコ、ペルー、アルゼンチンなどでは感染者数に対する死者数が多いのが目立つ。さらに追い打ちをかけるようにインド型(デルタ株)が85か国で検出され急速に蔓延している。感染力が初期のウイルスに比べて2倍以上あり、今接種されているワクチンの効果(免疫作成)も怪しくなってくる。ワクチンが比較的広がっている欧米やイスラエルなどでもインド株の感染拡大がみられ、大いに警戒を要する事態が来ている。

 私は経験がないが、1918年第1次世界大戦後に流行したいわゆるスペイン風邪が思い浮かぶ。悪性感冒でインド1,250万人、アメリカで55万人日本でも39万人全世界では実に2500万人の死者が出て、大パンデミックを起こした。当時はまだ抗生物質をはじめ有効な薬がなく大変であったろう。

迫る食糧危機と飢餓

 このような中世界的に深刻なる食料危機が迫らんとしている。これはゆゆしき問題でまさにもう一つのパンデミックである。今世界ではコロナの影響で経済活動も弱体化しており、そのため支援活動にも支障をきたしている。特に気候変動や地域的な紛争があちこちで発生して、これらが食糧危機に拍車をかけている。気候変動では地域的な豪雨やそれに伴う洪水(日本も決して例外ではない)がある。さらに昆虫が異常に大発生して地域があり、これが食糧生産に大きな打撃を与えている。気候不順は各地に台風やハリケーンを発生してこれがまた食糧生産を妨げる大きな要因となっている。また紛争も内戦だけでなく隣国との争いになっており、国内の政情不安な国も多く、国連も頭が痛いところである。食量不足は経済的な不安を生じさせこれが貧困を生み、暴力のもとになる隣国への侵入、移民・難民が増加する第一の要因である。慢性的な耕地の劣化や砂漠化も否めない。食糧危機問題はひいては経済社会不安を導き、国家予算が不安になりこの結果国民の栄養や保険にも関わってくる。その一方で世界的な人口増加も食量不足の原因の懸念材料である。現在世界の飢餓人口は8.2万人ほどおり、9人に一人は武力闘争地域にいる。この武力紛争のため毎年約920万人の子供が栄養不足で死んでいる。武力紛争はアフリカで多いと思いが前述のWFPはこれまで洪水対策も含めて緊急支援対策を実施してきた。しかし武力紛争問題は絶えない。今後もこれらに紛争地域への食糧支援は重要である。また一部の地域には内戦のため支援食糧が貧困民に届かないという難問がある。

コロナは発生前には世界の食糧危機は役1億5千万人であったのが2020年の終わりには2億7千万人に膨れ上がったという。コロナの影響で生活・生計が差し迫り生命が深刻な脅威にさらされる急性のそして深刻な食糧危機に陥ったのである。地域別のみるとアフリカや中南米・カリブ海沿岸の諸国が特に深刻な状況にあるという。

食糧危機対策

世界の穀物生産量は約26.5億トンとされるが驚くべきことはこの食品生産・加工過程で3分の一が廃棄されるらしい。それと食品ロスは大きな問題である。日本でも毎年約2,000万トンの廃棄食糧があるといわれ非常にゆゆしき問題である。一方この食料を原料にしたバイオ燃料製造がおこなわれているがまさに考えものであると言わざるを得ない。農産物耕地の増加はむずかしいことである。森林の伐採は環境破壊に繋がるし、砂漠の農地化も難しい。遺伝子組換え植物も許認可の問題がある。昆虫などのたんぱく源の食料化も食習慣の点で困難である。とにかく食品は人の口に入るものでありなんでもよいというわけにはいかない。

食糧問題の最大の解決策は最善のワクチンであるといった国連世界食糧計画(WFP)事務局長がいったのもまんざらでもないことである。

(食品化学新聞2021.8.12号 掲載)