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ベランダ菜園の鳥バトル

 技術士(農業部門)横山勉[横山技術士事務所]

 筆者は都下三鷹市の住民である。周囲には都市近郊農家がかなり存在する。都市近郊の農地には、避難場所確保・地下水涵養・児童の勉強の場・景観保全などの多面的役割がある。なにより、新鮮な野菜の供給基地として重要だ。農地の保持は大変だが、応援している。

 筆者の自宅は3階建てだが、2階と3階にベランダがある。後者のベランダは筆者が管理する菜園である。南向きで陽当り良好なのは利点だ。東西2.6m×南北1.7mと狭いのは欠点である。ビオトープも設置しており、グッピーを飼っている。その分、作物を置く場所が少なくなる。

1.1mの壁が周囲にあり、日陰になる部分が存在する。そうであっても、工夫すれば何とかなるものだ。選んだ作物がツルで上に向かって育つキュウリである。一定程度生育すれば、下部は日陰でも問題ない。

 例年、スタートは5月のゴールデンウィークだった。時間に余裕があるため、近年はやや早めになった。主要な作物は、マメ科、ナス科、ウリ科である。これらはすべて連作を避けるべき作物である。そうであれば、土壌の入れ替えを行う必要がある。鉢の下部には、昨年採取した作物を肥料化したものを敷き詰める。その上に土壌を入れる。

 主な作物は前述のキュウリに加え、エダマメやナス科のトマトやピーマンである。土壌の入替えの際、配慮していることがある。コガネムシの幼虫である。根を食害する害虫のためである。見つけた時は、「ナムアミダブツ」と唱えながら、水中に放り込む。数分で死滅するが、その後は取り出して肥料にする。同様に、ナメクジは完全に排除できた。

 重要な作物にシソ(大葉)がある。例年、こぼれた種子から大量に芽を出す。DIY店で芽生えを販売している。購入する人がいるためだが、気が知れない。

 さて、ベランダ菜園を20数年続けているが、2016年までは大きなトラブルはなかった。2017年に発生したのが鳥害である。最も重要なエダマメが食べられたのである。実がついていないエダマメには防鳥網をかけた。この年はこの対策の効果により、被害は収まった。2018年、前年同様に網を張って安心していたところ、網を食い破って被害を受けた。金網でカバーしたところ、被害がなくなった。

 2019年は問題なかったが、2020年が最悪の年になった。最初の被害が、秋に撒いたレタスとホウレンソウである。ある程度大きくなったところで、すべて食べられてしまった。そして、エダマメに被害は及ぶ。金網で囲っていたのだが、隙間から嘴を差し込んで中を食害したのである。それだけではない。トマトやピーマンも食害された。鉢代わりにしていたビニール製の米袋は側面をつついて穴だらけにされた。瀬戸物の鉢は土をほじくり返されたのだ。

 来ているのはヒヨドリである。ヒヨドリを模した死体や目玉を書いたCDなどをつるしたが全く効果なし。夜間に来ているので、動きに感応するライトも同様である。

黙って見ているわけにはいかない。違法は承知の上で、捕まえようとネズミホイホイや落とし穴を餌とともに仕掛けた。結果は、読者のご想像の通りである。安全な部分の餌は食べられて、危ない餌だけが残されていたのだ。筆者のベランダで、いたずらを楽しんでいるとしか思えない。ベランダ菜園を止めようかと思ったほどである。目と鼻の先にある農家のエダマメは全く被害なしというのが悔しいではないか。

 以上を総括すると、来ているヒヨドリは毎年異なり、1羽である。来るきっかけとなっているのは、1階の庭にあるキンカンである。極力、早めに実を落とすことにした。そして、2021年である。例年通りに作物を植えていたが、レタスやホウレンソウは全く被害がなかった。

 その後も同様である。トマトやピーマンもしっかり生育した。エダマメも全く問題なしである。そうであれば、あれほど憎く思えたヒヨドリもかわいく見えてくるものだ。エダマメは、1回収穫後に再度播種して2回目の収穫も楽しむことができた。

 トマトについて補足しよう。2021年はゲノム編集で作られたゲノム編集食品の届出制度 第1号になるサナテックシード社「シシリアンルージュハイギャバ」の栽培モニターになったのだ。精神をリラックスさせる機能を持つGABA(γ-アミノ酪酸)を多く含むトマトである。興味深いアピールの方法である。「ゲノム編集」であることを前面に出して販売するのだ。ゲノム編集という技術が遺伝子組換えと異なり、消費者のメリットが多いことを広めたいものである。

 2022年のベランダ菜園も安らかな状態であることを願っている。

以上

(食品化学新聞2022. 3.03号  掲載)