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紅茶を愛でる楽しみ

技術士 佐藤正忠(農業・経営工学部門)

 私は紅茶をいつも楽しく飲んでいる。我々が日常飲む茶、ウーロン茶、緑茶はすべてツバキ科の茶(カメリア・シネンシスL)の葉から作られる。製造工程の違いで、醗酵工程のない緑茶に対して醗酵させたものが紅茶になる。紅茶は摘んだ茶葉を萎れさせてから機械にかけて揉んで酸化を促す。最終工程で加熱して酸化を止める。紅茶は茶の生産量の約80%を占め、ほぼ世界中で愛飲される飲み物である。

紅茶の機能性成分とは 

茶葉にあるカテキンなどのフラボン(フラボノイド)、タンニンなどは多価アルコール植物ポリフェノール類である。抗酸化物質やビタミン類の他グルタミン酸など、遊離アミノ酸、食物繊維、カフェインなど多くの機能性成分を含む。そのため生活習慣病、動脈硬化の予防効果や体内の活性化酸素を分解する抗酸化作用がある。通常はリラックス効果が大きい。

紅茶を生産する国は30か国ほどある。紅茶の種類は産地で分けられるが、その土地の気候、土壌により多くの特色ある紅茶が作られている。各国の紅茶製造状況を次に示す。

各国でできる紅茶の状況

日本・・・香が高く和かな風味があり「和紅茶」として人気が高い。

明治時代に製造が開始された。緑茶の輸出が振るわず、国内で紅茶の製造技術が広まったが、1971年の輸入自由化で国産紅茶はほとんどなくなった。平成に入り狭山茶(埼玉)、亀山紅茶(三重)などで生産が再開された。

中国・・・数千年の歴史のある茶の発生地。茶の生産量は世界1位である。

中国茶はヨーロッパに伝わりイギリスの支持を受けた。スモーキーな味わいのラプサンスーチャンやアッサムに風味が近い雲南茶がある。多く飲まれるのは緑茶で、茶館にも多くの人が飲食を共にして交流する。中国人は独特のポットや空きビンに茶を入れ持ち歩き飲む習慣がある。

インドネシア・・・主な生産地はジャワ島西部で20世紀後半から生産量は高まった

第2次世界大戦や1949年の独立で茶園は荒廃した。その後は栽培が復活したのは1970になり輸出市場に復帰するようになった。

ベトナム

以前は緑茶が主流であった。元来フランス文化の影響が大きい同国で紅茶は、近年特に増産傾向にある。

インド・・・世界最大級の輸出国の一つで、北部と南部とではできる紅茶の特徴が異なる。生産量は4,387トンで世界第2位である。

個性豊かな香味が特徴である。北東部で葉ダージリンやアッサム、南部ではニルギリを生産する。である。家庭では最低でも1日に2杯は飲む。職場でも必ずティータイムがあるなど消費量はトップ。日常的に飲まれているのは細かい茶葉を煮出しミルクやスパイスを入れて飲む「チャイ」である。このチャイはロシアでも中東職でも通常飲まれる。

スリランカ・・・現在生産量は7,413トンで世界1位である。

日本に輸入されている大半はスリランカ産である。銘柄は標高で分類される。日本では高地産(ウバ、ディンブラ、ヌワラエリヤなどの地方)のものに人気がある。かってはコーヒー産業が主流であったが衰退し1860年代からは紅茶産業が始められた。この国も朝のティータイムを楽しむ人は多い。ミルクティが主である。暑い国であるがアイスティを飲む習慣はあまりないようである。

バングラデッシュ

紅茶の生産は19世紀にはじまった。生産地は北部を中心している。

ネパール

インドのダージリンに近いヒマラヤ山麓地帯の東側地方で主に製造されている。

トルコ

黒海に面した北東部が主なる生産地である。この国では20世紀に入って生産が始まった。

ケニア・・・生産量は3238 トンで世界第3位

世界有数の紅茶の生産国として急成長した国である。

タンザニア

南部高原地帯が産地である。紅茶は北東部などで生産される。ティーバッグ用の紅茶が主である。

マラウイ

19世紀後半から生産が開始された。ティーバッグ用がである。

フランス

香を重んじる国らしくフレーバードティーが中心である。ややあっさりとした紅茶を好む人たちが多い。

イギリス

21世紀に入ってから少数ながら栽培されている。この国で紅茶は国民的飲料である。濃い目の紅茶にミルクを加えて飲むことが多い。家庭で飲む人が多い。

私が技術指導訪問した国での特徴ある茶は南アフリカのルイボスティと南米のマテ茶である。いずれも紅茶といえるかどうか。ルイボスティは日本の茶とは全く違うマメ科で、茶葉を枝ごと切り乾燥・醗酵させ刻む。健康・栄養効果がありティバッグでも市販されている。マテ茶はモチノキ科で普通の茶である。独特の容器に茶葉と冷水を入れ、先がろ過できるようなスプーンで飲む。皆で回し飲むのはあまり衛生的ではない。

(食品化学新聞2022. 2.17号 掲載)